タシマン/タマンセは、何故K-POP史上に残る名曲なのか
K-POPには数々の名曲がありますが、ソシのInto The New Worldは別格と言えるでしょう。
日本ではこの曲の通称に「タシマン」と「タマンセ」の2つがあるのですが、去年の今頃、なぜそうした違いがあるのかをtwitterに書いたところ結構反響がありました。
が、当時はテキストを画像でツイートに貼り付けてたので、今後この話題に興味を持った方が検索しやすいよう、テキストにして加筆しています。
まず「タシマン」と「タマンセ」の違いですが、韓国語の「다시 만난 세계(タシ マンナン セゲ)」の最初4文字を取るか、間を省略したかの違いです。日本語で例えるなら「夜は短し歩けよ乙女」を「よるみじ」とするか「よはみじ」とするかみたいな感じでしょうか。
日本では両方の呼び方が定着しており、どちらを使っても間違いないです(というか通称なので正しいも間違いもない)。
日本でなぜ2つの呼び方が登場したのか、不思議だったのでtwitter検索やGoogleトレンドなどで調べてみました。2012年までは「タシマン」のみだったのが、2013年以降になると「タマンセ」も使われるようになっていました。2013年に何があったのかは謎です。
が、本国での通称が「タマンセ」なので、日本でも誰かが2013年頃にこの呼び方を輸入して広まったのだと思われます*1。
なお、この曲がリリースされたのは2007年ですが、韓国で「タマンセ(다만세)」 の呼び方が出てきたのはずっと後で、2009年になってからです。
なんで1年以上空いてるのかは謎なんですが、たぶん2009年1月に伝説の「Gee」がリリースされ、ソシが国民的グループになったからじゃないかと思います(TTがヒットした後のTwiceみたいなもんです)。
ちなみに、Geeはソシにとって事実上初カムバです。デビューしたのが2007年8月、Geeが2008年1月。なので、デビューから最初のカムバまで1年以上空いてるんですよね!びっくり!
一応、デビュー以降はリパケ出したり最初のEPからシングルカットしたり、テレビでドキュメンタリー番組的なことやったり等の活動はあります。が、大手事務所所属の新人グループが初カムバまで1年以上間空くとか、2019年では(Pledis所属でもない限り)あり得ないので、今のアイドルってカムバ期間短くて大変なんだな...と思いました。
さて脱線したので元に戻すと、最初に流行った呼び方が「タシマン」なので、2010年のソシイルデ頃から知ってる古参のSONEの間では「タシマン」と呼ぶ人が多いようです。
で、プデュ48のポジション評価でこの曲が使われることになり、本家と比較して叩いたりする古参の人がいるだろうなと思ったので、そういうのやめて欲しいよな、と気軽に以下のようなツイートをしたらそこそこ反響があったのでこの文章を書いた次第です。
twitter.cominto the new worldの評判が知りたくて検索する人がいるかもしれませんが、ITNW=海外、タマンセ=日本のKポペン、タシマン=古参ソシペンで、最後になるほど文句言ってる確率が高くなるのでご注意ください。
— kpkp # (@Chase_TheMoonJP) 2018年7月24日
ただ、ひとこと言いたくなるSONEの気持ちはよくわかります。この曲が、数あるソシの曲の中でも特別な曲だからです。
まずデビュー曲という時点で特別ですし、以下のremixバージョンは「この子たちこんなにダンスできるのか!」とデビュー直後のそこまで有名ではない時期に世間に驚きを与えることになったそうです*2。
また何よりも、ジェシカ脱退後の初めてのライブ(東京ドーム)のラストに、グループとファンの連帯を再確認するかのような、とてもエモーショナルな局面で涙ながらに歌われたことは世界中のSONEの間で知られています。
そしてプデュで歌われたのがこの時のバージョン(バラードバージョン)だったので、「思い入れがある曲の思い入れがあるバージョンなのに」と、引っ掛かるものを感じた人は少なくないと想像してますし、それはファンであれば当然の心境だと思います。
またこの曲についてもうひとつ知っておきたいのは、韓国ではただのヒット曲という枠を超え、社会を変えようとする人たちに歌われるアンセムとなっていることです。
例えば梨花女子大学で学長に対する抗議活動を行った学生が警察と対峙する場面で歌われ、さらにそれがドラマにもなったそうです。 youtu.be
このあたりの事情は記事を翻訳してくださった方がおられるので、ぜひ以下から読んでみてください。
また他にも、社会的変革を求める様々なデモやイベントでこの曲が流れ、参加者が大合唱している映像を見ることができます。
LGBTQ + Parade(2017)
憲法裁判所が中絶を禁止していた法律を違憲とした判決を祝うパレード(2019)
つまり、”Into the new world”を求める人たちにとってのアンセムであり、今後も時代を超えて歌い続けられることになるでしょう。
最後に触れておきたいのは、プデュ48でこの曲が歌われた日のことです。ポジション評価の収録があったのは7/16でしたが、実は11年前のこの日、「SMエンタから新人グループがデビュー」という発表がありました。つまりソシというグループが初めて世の中に存在を知られた日です。
そうした象徴的な日に、よりによってこの曲が、しかも日韓合同オーディションという新しい世界を切り開くであろうオーディションの課題曲として歌われることになるなんて、と個人的にはとても胸が熱くなりました。
ということで、この曲が歌われる回のプデュが話題となることをかなり期待していたのですが、ご存知の通り話題になったのはこの曲ではなくキリンちゃんで、しかも大炎上してしまった*3んですよね….。
キリンちゃんは個人的推しだったので、もう何というか色々無念でした。あれがなければ彼女は今頃スーパースターになってのかもしれないのにー。
最後に、動画をひとつ紹介しておきます。Into The New Worldは色々なアイドルによってカバーされているのですが、「こんなにも沢山のグループに!」が実感できる動画です。たぶん「タシマン」呼びしてた古参SONEが見れば泣けるでしょう。
영원히 소녀시대 .
*1:ちなみに2009-2010年頃にK-POPを追ってた人の多くがニコニコ動画見てたと思うんですが、その頃は誰も「タシマン」や「タマンセ」を使わず「ITNW」だった気がします。
*2:いまここまでダンスするグループは珍しくないですが、当時はアイドルがそこまでダンスしておらず、またグループが5人ぐらいまでとなることが多く、ソシほど大人数のアイドルが珍しかったそうです。
*3:メインボーカルがLove Whisperで伝説となった矢吹奈子様に決まったのに、キリンちゃんが「お願い!私にメインボーカルを!」とお願いし、かつ美味しいパートの大半を持って行ったため炎上、かつ特定の事務所の練習生が尺を取りすぎというウィスプル問題も指摘されてしまったというものです。パート取りすぎたのはキリンちゃんあかんでそれ…。とは思ったものの、アメリカン育ちで韓国にやってきたばかりなので、悪気なくアメリカンスタイルで主張するキリンちゃんを、日・韓育ちの他のメンバーがファシリテートできなかったという構図だったんだろうなとも想像しました。そういう構図、日本人の間でも結構ありますよね?