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K-POPについてだらだらと妄言を綴りたい時に更新するブログです。

2019年7-8月、印象的だった11曲 (1/2)

7-8月に印象的だった11曲です。今年の夏、みなさまいかがお過ごしでしたでしょうか。わたくしは若干特殊なフリーランスをやってるんですが、7月末で前の仕事の契約が終わり、次の仕事を探しながら3週間ぐらいグダグダっと過ごしてました。8月末頃からは新しい会社で仕事してて、会社は渋谷で109あたりは歩いて5分ぐらいの場所なんですが、忙しくてfromis_9もIZ*ONEも見れず、というかそもそも来ることを知らず、「え?来てたの....?」みたいなことが続いており切ないです...。


1.Fanxy child - Y

youtu.be このグループ、名前を初めて聞いた人も少なくないと思いますが錚々たるメンバーが集まった、いわゆるスーパーグループです。具体的にはZICO / Crush / DEAN / Penomeco / Millic / StayTunedという顔ぶれ。このへん、お互いによくfeat.したりされたりしてますし(Penomeco feat. ZicoとかMillic feat. Clubeskimoとか)、CrushとDEANはClubeskimoクルーな訳ですが、全員揃ってグループだよってなるとなかなか強烈です。

ちなみにStay Tunedはプロデューサーだそうで。ライブ映像を見ると右奥の方で卓を弄ってます。トラックメーカーあるある、ライブ中は暇なので適当にフェーダーいじくったりしてる系ですね。

youtu.be

この曲、MV含めて断然かっこいいというのがありますが、岐路に立つ様をYという文字で表現したモチーフとこの曲の背景について色々と思いを馳せざるを得ません。ご存知のようにZICOは昨年11月に事務所との契約を終了させ、個人事務所を立ち上げました。で、作ったのがKOZ Entertaiment。KOZはKing of Zungleの略称だそうです。

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で、このこのKOZとして初めてリリースしたのがこの曲。個人事務所最初の曲な訳で、ZICOにとっては特別な思いがあるはずです。歌詞と彼の自身の状況は相当重なってるのではないかと思います。例えばこういう歌詞とか。

What was the question again? yeah

Why you look so mad?
What made you so sad?
Why you looking at me like that
I’m just tryna be myself

また、そういう特別な曲に手を貸してくれたのが旧知のFanxy Childの仲間、というところにも男達の熱い友情を感じます。美しいです。

ちなみにKOZエンターテイメントは今年の5月にオーディションやってました。日本人も応募できたみたいで、「koz オーディション」とかで検索してみると、K-POP系オーディション情報サイトが沢山ヒットします。2020年後半ぐらいにグループがデビューするのかもしれません。ZICOとKOZが何を目指してるのかわからないけど、ZICOは何か大きなことをやってくれると思います。

2. KNK - Sunset

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KNKほど、K-POPアイドル界の矛盾や受難を体現しているグループはなかなかいないかもしれません。

メンバーの多くがBigHitやJYPやFNCといった事務所で練習生経験を積んだ後にYNBエンターテイメントに移籍し、長い準備期間を経た後にようやくデビュー。しかし事務所はプロモーションが下手で、例えばメンバーをあの悪名高きMixnineに出演させファンの間で色々な波紋が広がってた、みたいなことが起きてます。

で、事務所はデビュー2年後に倒産。しかもメンバーのひとり、というかメインボーカルがパニック障害により脱退。しかし、グループはそれらの危機を全て乗り越え、新メンバーを迎えて再び5名体制となり220エンターテイメントと契約して活動継続にこ漕ぎ着けました。

そうした状況で出されたのが前作のLonely Nightです。憂いのある曲だな...と思ってたのですが、これらの経緯を知った上で聴くと歌詞含めて相当グッときます。

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で、今年の夏に満を持してリリースされたのがこの曲です。「サ サンセーット フォ フォーヤー サ サンセーット フォ フォーヤー」って永久リピートしてた人いるんじゃないでしょうか。文句なしのかっこいい四つ打ちディープハウス*1であり、予備知識無しでハウスDJに与えたら普通に流してくれそうな気がします。

ベルリンのライブとかの音を聴いても、低音がブリブリ出せる箱とかだと非常にいい感じです。これはぜひクラブで聴きたい。 www.youtube.com

ただ、なんとなくクラブよりもファッションショーで流れてそうな気もしました。と思ったらEPの名前がS/S Collectionだから公式も意識してるっぽいです。KNKはみんな身長185以上あるし、今年のTOKYO FASHION Weekあたりにゲストでモデルやってくれたら嬉しい(ってこと気軽に言うと本職のモデルの皆様に怒られるかもですが)。

3.GWSN - Red Sun

youtu.be GWSNってK-POPのメインストリームと完全に距離を置いてる感あります。他が何してようが我関せず、我公園少女みたいな。「公園」ってぐらいだからみんなが集まって犬の散歩したりブランコ漕いだりしてる身近なのを想像してたら、数百年に一度出現するラピュタ的なやつの中にある、伝説の空中庭園だったようです。

そういう迫力のベースになってるのが、音楽やMVの世界観に一切ブレがないことで、PuzzleMoon→PinkStar→RedSunと曲のジャンルは微妙に変わってますが、天体をモチーフにしたタイトル、世界観、そして四つ打ち系という軸がガッチリ貫かれてます。

今回も作詞・作曲は全てStuipid Squadで完結させてます。以前も書きましたが、Stupid SquadはGWSN以外ではKillagramzぐらいしか実績がない新人チームです。GWSNってお金かかってるプロジェクトだろうに、新人チームを起用していくのは本当にすごいです。

なぜならStupid Squadという実績が無いチームを評価できるだけの力量を持った人が、GWSNプロデュースチームにいるってことだからです。日本だと普通そういう目利きの人はいないし、いたとしても目利き以外の人がビビって実績あるおじさんとかにしか頼めず、時代とズレたアウトプットが出てきたりするのですよね。例を挙げるなら、日本だと国プにkemioが起用できないってことですかねー。

それはともかく、個人的には、ビルドアップの最後というか、サビの出だしのとこで「Redsun!」って歌ってるのがかっこいいなと思います。あと”Ah yeah yeah, Ah yeah”とか"You! You!"とか"オトッケ!"みたいなフレーズをぶち込んでくるのが、曲の作り方としてヒップホップぽくて面白いなとも感じました。

この曲はGWSNの3部作を完結させる楽曲らしいのですが、この3曲でどのグループとも重ならないコンセプトを築くことに成功したのは、たぶんK-POP史上でもあんまない気がします。アルバムのジャケットも美しいです。YouTubeの再生数やLikeを見るとなかなか厳しい現実はあったりするのですが、K-POPの枠を拡張していくグループなので、今後もやりたい放題やってくれることを期待してます。

4.ITZY - ICY

www.youtube.com 最初MV見た時に「ティーンズクラッシュ路線は貫くんだな」と思ったのと同時に、もう韓国マーケットは通過点でしかなくって、Twice以上にグローバルに通用するグループを狙ってるんだな..と感じて圧倒されたのを覚えてます。

で、結果としては12勝。前回が9勝だったので通算21勝です。もう規格外過ぎて訳わからない...。21勝って言われてもよくわからないと思いますが、例えばあのセブチでさえHitまでの時点で通算28勝(2019/9/15時点)です。デビュー半年で通算21勝っておかしいです。異世界転生カンスト系のラノベとちゃうんかと。

ちなみに1曲あたりのWin数で言えば、以下の通りです。リストに並んだ曲を見ればわかりますが12勝って普通に大記録です*2

  • 21勝:BTS - BOY WITH LUV
  • 18勝:EXO - Call me baby
  • 17勝:APINK - LUV
  • 15勝:GFRIEND - ROUGH,WANNA ONE - Energetic
  • 14勝:GFRIEND - NAVILELLA, SNSD - GEE, SNSD - LION HEART
  • 13勝:TWICE - TT
  • 12勝:BIG BANG - HARUHARU, BTS - FAKE LOVE, 2NE1 - I DON'T CARE, ITZY - ICY

また、最後のクラウンをかざすコレオも話題になりました。ちなみにあのコレオはブリトニー・スピアーズのToxicで有名な人が担当されたそうです。

韓国国内でここまで強いのOrbitとしては本当に羨ましいんですが、ビジネス的観点で考えると、もう韓国国内での人気とか位置とかはどうでも良いんだろうと思います。だってもうやることないじゃないですか!それよりも、国内外で音源売ったりライブやったりしてJYPの収益に力強く貢献できる、っていうポジショニングを目指してるのだと推測されます。

ただ、どの地域で売れるグループを目指してるのかはわからないな、と感じました。LAでMVを撮影するぐらいなので欧米人気を狙ってる可能性がありますが、実はiTunesのチャートから見るとITZYは欧米圏はそこまで強くないです。例えばUSだとチャート最高位が10位でした。現状、ITZYはアジアに強いグループです。

理由はたぶん明確で、今のITZYのティーンクラッシュ路線が狙ってる10代-20代前半には超強力なライバルがいるからです。ビリー・アイリッシュです。

もし彼女のことを知らないならググって欲しいんですが、今のところ最強というかほぼ1強状態なので、もしITZYが真剣に欧米での基盤拡大を狙うなら彼女に対抗していく必要があります。ITZYの最大のライバルはビリー・アイリッシュです。

別に欧米圏で売れることは目標にしなくても良いけど、BTSもブルピンもUSでの知名度が一気に箔がついて格が上がったので、欧米圏で売れたいと思ってるグループは多いはずで(そう思うのは日本人的感性なのかもしれないですけど)、ITZYも狙ってるのかもしれません。

もしそうなら、今のティーンズクラッシュ路線では限界がありそうです。ちなみにLOONAはアリアナ・グランデに勝利してiTunesチャートグローバルNo.1を達成しており、海外だと無双*3です。でも韓国国内は弱いので、アメリカのiTunesチャート1位あげるから韓国での5勝ほど分けてもらませんかね?とか妄想してしまいます。

ただ、ITZYのメンバーは最強過ぎるので、ティーンクラッシュで行き詰まってコンセプト変更しても秒で対応できるでしょう。なので心配する必要は全くないです。というか心配すること自体がナンセンスでしょう。

ということで長くなりましたが、グループとしてのポジショニングは大事だけどITZYはメンバーの能力もポテンシャルも高すぎるので関係ないな、という話でした。

あと楽曲について。作曲陣はとても多く、レドベルのピカブに参加してたEllen Berg、ジンソルのSinging in the rainに参加してるCaesar & Loui(Daniel Caesar & Ludwig Lindell)とか、LOONAのCurisityやSatelliteを作ったJoombasのAshley Alisiaなどがいます。

また一部で話題になってましたが、なぜかPenomecoがいます!面白い起用ですよね。これ、日本で言えばLDHのHIROがプロデューサーとしてtofubeatsを起用するような感じの違和感がある意外な人選です。

で、そうした作曲陣のひとりであるAshley Alishaが、K-POPリアクション動画最大手としておなじみなPDと一緒に曲について制作プロセスを語ってる動画があります。これ、ほかの作曲者との共同作業的な話を期待してたのですが、実はAshleyさんでさえ全容あんま知らないとのこと。

www.youtube.com これは推測ですけど、名前がクレジットされてるものの、Slackとかeメールとかでデータを送付した曲が採用されただけっぽいんですよね。たまに作曲家が話をしてる「餅ゴリとかヤンサは曲作りについてものすごく細かい指示を出してくる、100回ぐらいメールやりとりした」みたいなこともやってないような気がします。

前からK-POP楽曲で作曲者が異様に多いの、制作プロセスどうなってるのか疑問でしたが、たぶんフレーズを提供する役割の人と、それらをレゴブロックみたいに組み合わせて曲を作る立場の人がいるのだと思います。で、全体を組み合わせたのは当然餅ゴリ氏でしょうし、そのへんの作業の片腕として起用されたのがPenomecoなのかもしれません。彼がそういうエンジニア的なスキル持ってるかはあんま知らないんですが。なおこの動画、とても面白いので英語わかる人はぜひ見るとよいです。

5.Lee Gaeun - Remember You

www.youtube.com MVを見て、なぜこんなに綺麗で気品に溢れた女性を事務所は放置していたのか...って思いました。彼女がどういう想いでレコーディングやMVの撮影に臨んだのかはわかりませんが、なんとも言えない切なさとか、彼女ならではの柔らかさとかを表現しててとても印象的でした。

もし、嫌いな事務所アンケートをとったらぶっちぎりで1位取れるのがプレディスでしょう。自分も大嫌いです(所属グループは好きですけどね!)。ただ、ダメな事務所って別にプレディスだけじゃないのが闇が深いところなんですよね...。

プレディスは儲かってるのに自社で抱えてるグループを塩漬けにしておくのが悪質なんですが、アイドル自身には何も非がないのに、お金がないので塩漬けにされてるグループって全然珍しくないので。個人的にはgugudanがとても心配です...。

不遇なアイドルを見る時、こんな良い子なのになぜ...って思ってしまうけど、どんなに才能があっても可愛くても性格がよくても、かつ努力してても、タイミングや運で成否が左右されるし、周囲の大人たちがダメダメなこともしばしばあるし、収益が挙げられないなら容赦無い退場が待ってる、しかも生き残れる確率はとてもとても低い、ってのがエンタメの世界なんですよね。残酷な世界だけれども、なんかそういう辛い側面を改めて認識されられてしまったな...という気分で辛くなりました。

でも本人の方がもっと辛いわけで、でもそういう気持ちを抑えてファンに対峙してるのがアイドルの凄いところですよね。自分なら絶対「こんな辛いことがあったよ...」ってみんなの前で言っちゃう。

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そういえば、少し前にカウンはインスタで"Reed in the sun"って意味深な投稿してました。Reedって葦のことで、"A reed in the wind"って言い回しで「嵐で大木は倒れてしまうけど、葦は弱いけどしなやかに揺れるから倒れない。だから弱いけど強い」みたいなことを指すのによく使われたりします。

Reed in the sun ってたぶんポジティブな意味の言葉なんだろうけど、カウンは辛いことがあっても他の人には見せないように頑張る人っぽいので、なんかあったらSOS出したらええんやで、あなたはもっと愚痴ってもええんやで、と声をかけてあげたいです。

とにかく、彼女にはこの先花道だけ歩んで欲しいです。


続きはこちら! taperead.hatenablog.com

*1: 自分も最近まで知らなかったのですが、Deep Houseには狭義と広義の意味があり、それぞれかなり違います。狭義だとLittle Loui Vegaの"Elements of Life"とかMasters At Workの"Beautiful People"とか90年代のハウスを引っ張った人が連想されるんですが、Deep Houseという言葉はその後かなり広範囲なハウスに適用されます。トロピカルハウス・テックハウス・プログレッシブハウスあたりを雑に呼ぶ感じになってるそうです。 

*2: 参考: www.youtube.com

*3:アルバムx xiTunesアルバムチャート26ヶ国で1位でグローバルでも1位だったのに、タイトル曲の"Butterfly"はMelOnで63位,Soribabaで56位でした。