taperead

K-POPについてだらだらと妄言を綴りたい時に更新するブログです。

2019年5-6月、印象的だった10曲 (3/3)

5-6月の印象的だった10曲の続きです。


#7 Ladies Code - Feedback

youtu.be

レディコの約2年半ぶりのカムバです。レディコについて「Galaxy」や「The rain」のイメージが強い人がいるかもしれませんが、グループとしてはファンクやゴスペル等の要素が入った曲を得意しており、その意味でこの曲は原点回帰といって良いでしょう。そして、この原点回帰にはとても大きな意味が込められていると思います。

2014年、グループのメンバーを失う事故を経てリリースされたMYST3RY/MYST3Re/STRANG3RといったEPは傑作でした。が、このEPでもその後の活動にも、ファンの側にも、悲しみの影が常にちらついていたのは否めなかったような気がします。

事故からはもうすぐ5年が経過します。もちろん、何年経ってもグループもファンもあの事件のことを忘れることは決してないでしょう。ただ、事故以降止まっていた時間が再び動き出し、影を振り払って再び明るい道を歩き出すような曲がリリースされたのは素直にポジティブなことです。

news.kstyle.com

#8 EXID - We Are..

youtu.be 日本での契約が残ってるものの、グループとしてEXIDはここで一区切りで、現メンバーでの韓国のカムバは5月が最後となりました。

そういうカムバのEPのタイトルがWe。で、カムバ曲はMe&Youですが、2曲目に入ってるファンに向けて別れを告げるようなダイレクトな歌詞がこの曲です。ぜひ歌詞の和訳探して読んでいただきたいです。だいぶ涙腺に来ます。

韓国のアイドルって、日本みたいに「卒業」文化がないので、メンバーの脱退やグループとしての活動最後に何かすることはなく、「契約を更新しませんでした」「脱退しました」みたいな事務的な連絡で終了することが大半です。

大手を除けばそんなにお金が唸って訳ではないので、採算が取れないなら卒業イベントなんてやってられない、ってのはビジネス的な判断としては正しいんですが、いわゆる「亡霊」が大量発生するし辛いんですよね。。

そういうK-POP界で、こういう形でファンに向けてお別れの曲を告げるという機会はとても稀ですし、その分、積み重なった感情が濃縮されています。なお作詞にはメンバー自身によるもので、しかも全員が携わっています。自分の推しグループがそういう曲出したとしたら、って考えるだけで泣けますよね….。

日本での最後の活動に何らかのセレモニーはあるんですかね?本国の音楽番組で1勝以上できるレベルのK-POPのグループが、異国の地で現体制でのグループの最後を飾ることになるのってたぶん初めてなので、エイベックスの方にはぜひ頑張って実現させて欲しいです。

#9 OnlyOneOf - Savannna

youtu.be IZ*ONEのカンちゃん擁する8D Creativeからのグループ。ビョンギ氏が絡んでることでOrbit達は注目してます。

というか、このグループはもともとブロベリからデビュー予定だった8x8x8です。古参のOrbitじゃないと知らない話だと思われるので説明しておくと、ブロベリから「2018年8月8日に新しいグループをデビューさせる」って2017年に発表があり、Orbit達はみんな期待してたものの、結局デビューできなかった、というのが8x8x8。

理由については公式からの発表が一切ないので不明ですが、ブロベリが‪LOOΠΔ‬に集中するためだと言われています。

また、OnlyOneOfと8x8x8xと関係についても公式の発表はありません。ただ、

  • 元ブロベリ練習生が3人もいる
  • うち、ひとりはViViのEveryday I love youのMVに出演してたイケメン(ラブ)
  • ”time leap”のMVでは "8nly8ne8f”ってテキストが流れてる

などなど、状況証拠が揃いまくってるので間違いないでしょう。その割にはOrbit界隈がそこまで盛り上がってないんですけどね!そういえばプデュ48に出てたコユジンもブロベリ→8Dですが、何か縁があったりするんでしょうか?

さてこの曲、最初聴くとそこまでインパクトはないのですが、何度か聴くともう1回聴きたくなってくるスルメ曲です。またMVがとてもスタイリッシュで是非見ていただきたいです。

なお公式は「弱肉強食」「メディアオフライン」の言葉を気に入ったようです。公式サイト見れば一発でわかります。

OnlyOneOfオフィシャルサイト

このグループについて注目したいのは、「新しい男性像」を提示することを宣言していることです。

いま猛烈に世界が変化する中で、個やジェンダーのあり方が変化しており、特に従来の男性像は急激に時代環境に合わなくなってきてます。しかし全ての人が変化についていけてる訳ではなく、「おっさん何もわかってない」「令和なのになぜそんなこと言うのか」問題が色々なところで発生してます。

そうした個やジェンダー像の変化とアイドルは無縁ではありません。むしろアイドルこそ積極的にそれらの変化へ対応することが求められます(例えば時代錯誤な女性蔑視発言する男性アイドルって、顔がどれだけ良くても絶対無理ですよね?)

「これまでの男性像が時代に合わなくなってきてる」「じゃあ今の時代のあるべき男性像は何か」ってのは色々な分野で世界中の人が模索してる問題です。例えばこれまでずーっとマッチョな男性像を提示し続けてきたヒップホップ界隈でさえ、マッチョじゃない世界観を追求してるラッパーが増えてきてます(例:ロジック、XXXテンタシオン)。

OnlyOneOfが男性像を提示するという難しい問題にどこまで取り組むのかはわかりませんが、もしグループのテーマとして正面から取り組み続けていくならK-POPの歴史に残り得るものとなるはずです。ということでとても期待してます。

ちなみに、この分野に興味がある人は現代思想の「男性学の現在」 特集号を読むのがオススメです。MSMC(Men & Masculinities Studies)の成果ってみんなもっと知っておくおくべき分野だと思うので。現代思想って難しそうな雑誌ですが、実はそんなに難しくないし、本屋や図書館で見つけたらぜひ手に取って見てください。

青土社 ||現代思想:現代思想2019年2月号 特集=「男性学」の現在

#10 Sulli - Goblin

youtu.be ソルリと言えば思い出す超個人的エピソードがあります。某韓国系ネット企業(みなさまお使いの緑のアプリ作ってるとこです)で働いてたことがあったんですが、f(x)からソルリ脱退の報道があった時に日本人の同僚と「ソルリが!!!」って話をしてたら、隣にいた韓国本社から出張で来てた人にニヤっとされました。

その人は日本語できず、私も韓国語できないんですがとりあえず通じたみたいです。で、その後英語で「めっちゃショックでもう生きていかれへんわ」って訴えたらさらに苦笑いされた、ってことがありました。彼がf(x)ペンなのかどうかは今もわかりません。

あれから4年ぐらい経過し、唐!突!に!カムバが決まったので相当驚きましたが、そういうのも含めてソルリっぽいのかもしれません。

彼女は色々なエピソードを持ってる人なので賛否両論/好き嫌いはあるでしょうが、このドリーミーながらも、Goblinってタイトルどおりに少し不気味なムードをモノにしてるのはやっぱり凄いです。この何ともいえないバイブスがソルリだと感じました。

また曲について、なんだかPitchforkが8.0以上つけそうなバンドっぽいなと感じました。例えばこういう感じの。

youtu.be

youtu.be

なお、このGoblinも含めて3曲がEP(シングル?)に入ってますが、全部良いです。特に最後の「Drothy」という曲はまさかのドラムンベース!「風邪のドロシー、砂漠のドロシー、嫉妬のドロシー」みたい不思議な歌詞を延々と繰り返す面白い曲です。

ソルリが脱退した4年ぐらい前だと「K-POPっぽい曲」って比較的明確に定義できたような気がするのですが、いまK-POPって様々なジャンルへ貪欲に取り組んでおり、「K-POPっぽい」の境界がどんどん拡張されていってます。この曲はそういう状況を改めて感じさせてくれました。


ブログをアップする直前で10曲じゃなく11曲分書いてることに気づきました。まあいいや。ということで、次が#11です。


#11 (G)-IDLE - Uh-Oh

youtu.be これ、90年代後半のヒップホップ・R&B感丸出しですよね。カットアップ→スクラッチの順番で、ドラムマシーン 、ストリングスの入り方とか、もう完璧にあの時代です。

少し前にEXIDも90年代を意識した曲を出してますが、EXIDが80年代後半〜90年代前半、(G)I-DLEはもう少し後の90年代後半って音です。ロケの場所も同じだし、これ2つの曲で全編・後編になることを意識したのでは?っていうレベルです。

これでティンバランドっぽい音をGugudanあたりがやってくれたら完璧なリバイバルリレーで、MC Ryuさんあたりのこれぐらいの時代のヒップホップ好きな人達が大喜びするんじゃないでしょうか。

いま、世界中を見渡しても80-90年代のヒップホップをここまで熱心に完コピしてるのってK-POPだけじゃないでしょうか?

プロデュースしてる側の年代が当時B-BOY/B-GIRLだったから、が理由として大きそうですが、作り手の好みを押し付けるだけにはなっておらず、ファンの側もちゃんと喜んでて需給のバランスが釣り合ってるのは興味深いです。日本でも誰かやってみたらいいんじゃないでしょうか?


ということで、今回は以上なのですが、今回10曲に収まらなかった他の曲をちょろっと紹介するエントリーを書きました。

taperead.hatenablog.com